医療従事者が気をつけるべき言葉遣い

医療従事者は、患者と信頼関係を築くことを最も重視すべきである。医師会による「医の倫理綱領」においても、やさしい心を持って患者の人格を尊重し、説明を尽くして信頼を得ることを第一の心構えとすべきと記されているのだ。医療従事者は、決して患者に医療を与えるような上位の存在などではなく、患者と対等でその意思を尊重してインフォームドコンセントに十分配慮する立場でなければならない。そうした心構えを体現する姿勢としては、いくつかの方策が挙げられる。
まず端的に表すことができるものとしては、「言葉遣い」があるだろう。適切な尊敬語の使用は、医療の現場で患者に接する人間には必要なスキルである。患者に十分な配慮を示すにおいて、これほど明確にその姿勢を表現できるものは他にないと言ってもいい。それだけ言葉遣いにおける尊敬語は重要であるが、ここに医療の現場独特の落とし穴がある。即ち、患者への配慮を前面に出し過ぎることで使用する尊敬語が過剰になってしまい、結果的に慇懃無礼と評されるケースが意外に多いのだ。
さらに、患者との関係は非常にデリケートな側面がある。特に、患者に対して厳しい状況を伝える際は、その言葉遣いに細心の注意を払わなければならない。尊敬語のみでは、「無味乾燥」といった印象を持たれかねない。そのため、例えば患者の個人的な内容に触れる際は、やや尊敬語の使用を緩めて距離感を縮めるように演出するのが有効だ。そして、中身を説明する際は、患者の心を和らげるような、クッション言葉を表現に盛り込むなどの配慮が必要である。

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